スペシャル取材

表現活動を通じて、以前の私のように苦しんでいる人の、心の解放のきっかけになりたい 造形作家 澤奈緒

澤様0 クリエイティブ

1977年東京生まれ。3年間ブラジルで思春期を過ごす。美術大学卒業後、自分が何をすべきなのかを見失ってしまったため、興味を持った仕事を複数経験。その後、表現活動に戻りたいという願望に気づき、制作活動へ。主に石塑粘土や古布などを素材とした立体作品を制作、国内外で作品を発表。また、自分の作品を身に纏うアート仮装「化身プロジェクト」や、協力会社の技術サポートを受け、3Dスキャンした作品を使用したヴァーチャルリアリティの制作も行っている。自身のアダルトチルドレン経験をベースに「心の解放」を目指し、仏教や神道をベースとした精神世界や科学をテーマに制作している。 2014年国際現代美術家協会IMA展にて外務大臣賞を受賞。

生き延びた人間として、現在苦しみの中にいる人に「出口があるよ」という一例を示したい

このお仕事をされる上での信条を教えてください。

造形作家として、石塑粘土や古布を素材とした白い立体作品制作や、自分の作品を身に纏うカラフルなアート仮装「化身プロジェクト」、3Dスキャンした作品を使用したヴァーチャルリアリティの制作を行っています。それぞれ異なる表現形態ではありますが、共にトラウマからの解放や精神の自由への祈りを込めた世界観を表現しています。
「機能不全家庭で育ったため、トラウマに囚われた人」のことをアダルトチルドレンと呼びますが、私は長い間、それによる自殺衝動に苦しんできました。その苦しみからなんとか抜け出したいと、アダルトチルドレン関連の本を読み漁ったこともありました。しかし、どの本にも原因や傾向は書いてあっても、私が一番知りたかった、苦しみを克服した人の話はありませんでした。
しかし私は最近、表現活動を通じて自殺衝動を克服できたと感じられるようになりました。生き延びた人間(サバイバー)として、現在苦しみの中にいる人に「きっと出口が見つかるよ」という一例を示したいです。

映画配給会社時代の出会いによって、蓋をしていた表現への欲求が湧き出した

このお仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

「何を言っても無駄」という諦観はアダルトチルドレン特有の思考回路ですが、私はもの心ついた時から、いつか家を出て自由になってやるという反発心だけは持ちながらも、自分の頭で考えることをやめてしまっていました。しかし、大学を卒業した後は自分の足で人生を歩まなくてはいけません。その時初めて、自分が本当に何をしたいのか、何を目的に生きてゆくべきかわからないことに気が付き、途方に暮れました。絵を描くのが好きだったため美大に入学したものの、表現することに対する羞恥心や恐怖心でアートやデザインの仕事に就くことは考えられませんでした。
そこで、後先考えずまずは興味を持てる仕事に就いてみることにしました。最初は私立の中高一貫校に教育プログラムを導入する仕事、次にミニシアターの映画配給会社。ここで映画監督や、音楽家、小説家、写真家など表現を生業としている人と出会い、蓋をしていた表現への欲求が改めて湧き出し、その世界に戻る覚悟を決めました。その後イラストレーションの学校に通い、学費を稼ぐため、マイクロソフトやリクルートで派遣や業務委託の業態で働きました。そして現在は、マイクロソフトで出会った夫との結婚を機に、表現活動に専念しています。 教育・映画・IT・求人業界、編集・広報・Webなど、業種や職種も一見バラバラなその時々で思いついた方向へ進んできたのですが、不思議なことに全ての経験が現在繋がってきています。

心が繋がった時に、制作をしてよかったと最高の手応えがある

「このお仕事を続けていて良かった」と思うのはどういった時でしょうか?

「化身プロジェクト」は、「馬鹿馬鹿しいことを全力でやる」をモットーにしているのですが、一時でもなりたい自分になれ、仮装をしている最中は笑われることが怖くなくなるため、心の解放にとても効きます。「元気をもらえた!」「自分もやりたい!」と笑顔の輪が広がっていくのは本当に幸せなことです。また、先日マレーシアのアートフェアで立体作品を展示したのですが、マレーシア人アーティストがその作品をみて強い感情を喚起されたと話しかけてくれ、お互いに深いトラウマを乗り越えてきたという共通項を発見し、思わず感涙してしまいました。作品が媒介となって、言語を超えて心と心が繋がることが出来る。制作をしてきてよかったと思わされた最高の瞬間でした。

素敵なチャンスが来たら飛び込んで、 この生き延びた背中を見せてゆきたい

今後の目標を教えてください。

作品を一人でも多くの人に見ていただくために、国内外での展示をコンスタントに続けていこうと思います。また、ある会社さんから協力をいただき半年前から始めたヴァーチャルリアリティ作品制作も、技術を学んで表現の幅を広げつつ、ヴァーチャルとリアルを繋げるようなワークショップを開催しようと考えています。新しい表現方法を模索するためにも、その時々で作品の形態や素材は変化していくと思います。
素敵なチャンスがきたら臆せず飛び込んでゆこうと考えています。平和と考えられている日本でも、以前の私のように家庭内や自身の心の中の戦場で死闘している人は大勢います。私はアダルトチルドレンというトラウマを背負い、その解消のためにアーティストとしては20年遠回りしてしまいました。しかし死闘中の人たちにこの生き延びた背中を見せてゆくことが、私の役目なのだと最近は思えるようになりました。表現活動を通して、この経験を伝え続けていきたいと思います。

最後にこのページをご覧になっている方へのメッセージをお願いします。

「心の声を聞け」とよく言われますが、以前は自己肯定感が低かったこともあり、その重要性を理解することが出来ませんでした。
しかし、自分を大事にすることが出来るようになった今は、それが前進するために最も必要なことだとわかります。さまざまな情報が飛び交い、価値観がめまぐるしく変化する現代ですが、自分の信じた道を進み、嗅覚を効かせて「ここは良さそうだ!」と食指の動くところに飛び込んでみると良いのではないでしょうか。
アートは美しいだけではなく、気がつかなかった視点を与えてくれたり、無意識に自分を縛っていたものから自由にさせてくれる力を持ちます。私自身も更なる心の自由へ向かう途上ですが、ぜひご一緒に心を解き放っていきましょう!Liberty!!

ゆめかなう編集部

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